フィルムカメラといっても種類もタイプもたくさんあります。
「欲しいカメラがあるけれど使い方がわからない、使いこなせるか不安。」
「操作が簡単なフィルムカメラを探しているがどれがいいのかわからない。」
「背景をぼかした写真を撮りたいが、欲しいカメラにその機能が備わっているかわからない。」
など、さまざまな理由からフィルムカメラをはじめるのを迷っていませんか。ここではフィルムカメラを気軽にはじめたい方に向けて、わかりやすくフィルムカメラの基本をお伝えします。フィルムカメラの仕組みを知ると、今までと違う写真が撮れるようになり、もっと写真が好きになりますよ。
[講師]ライター 河野尚美
フィルムカメラの種類と特徴
フィルムは、デジカメでいうメモリーカードのような役目をしています。撮った写真はフィルムに焼き付けられます。
フィルムカメラの種類には、大きく分けて、
- 35ミリカメラ
- 中判カメラ
- 大判カメラ
とあります。
ここではカメラ初心者でも扱いやすい35ミリのフィルムカメラを取り上げます。35ミリカメラというのは、フィルムの縦の長さが35㎜なのでそう呼ばれています。中判のカメラや、大判のカメラはフィルムのサイズが35㎜より大きくなります。お気に入りのカメラを見つけたら、カメラの中に入れるフィルムのサイズを確認して購入しましょう。
なお、35ミリのカメラは大きく分けて、レンジファインダーカメラと一眼レフカメラに分けられます。現在、35ミリのフィルムカメラは製造されておらず新品を購入することができません。中古のカメラショップやネットでの購入が一般的です。
レンジファインダーカメラとは?
レンジファインダーのカメラは、軽くて扱いやすいのでブレにくい利点があり女性にも使いやすいカメラです。
使い捨てカメラ、コンパクトカメラ、がこのタイプになります。
オート機能が備わっているタイプや、ピントを合わせて撮るタイプもあります。レンズとファインダー(のぞき窓)が連動していないので、ファインダーから見た被写体の範囲と、実際に写真に納まる範囲に誤差が生じます。日常を撮るスナップ写真に向いています。軽いので、いつでも持ち歩けて気軽に撮るのに向いてるカメラです。
一眼レフカメラとは?最初のレンズはどんなのがいい?
レンズに写った被写体は、カメラに内蔵された鏡に反射(レフレックス)され、ファインダー(のぞき窓)に写ります。ファインダーから見える景色は、カメラに内蔵された鏡に反射したものが見えています。最近、主流になっているミラーレスカメラは、このミラーがないのでミラーレスカメラと言われています。フィルム一眼レフカメラは、オートフォーカス機とマニュアルフォーカス機のふたつにわかれます。
オートフォーカス機
オートフォーカス機はカメラ側が自動でピントや絞りを合わせることができます。ピントが合わないとシャッターが切れない仕組みになっており、絞り優先モードやシャッタースピード優先モードに切り替えることができます。重量が1kgあるカメラもあり、女性が持ち歩くには負担が大きいものもあります。
マニュアルフォーカス機
マニュアルフォーカス機は、ファインダーの中にある露出計を確認して、絞り、シャッタースピードを自分で決めて撮るカメラです。新品で販売しているメーカーはないため、中古カメラ店での購入やフリマアプリなどで取引して入手します。
フィルムカメラ初心者は露出計が内蔵されているカメラがおすすめです。購入するときは露出計が内蔵されているか確認しましょう。また、中古品ですので露出計がついていても壊れていて作動しないものがあります。露出計の作動確認も購入時確認が必要です
はじめて購入する場合のおすすめレンズ
一眼レフカメラは撮る対象によって、レンズの交換ができます。初心者におすすめレンズは、標準レンズと言われる「50ミリ単焦点レンズ」です。
このレンズで撮る場合のコツは、ズームでも広角でもないので、自分で動くことが必要になります。被写体を大きく撮りたい場合は、被写体に近づきます。景色の隅まで入れたい場合は、できる限り被写体から離れます。50ミリのレンズの写る範囲を身体の感覚で覚えていきましょう。
フィルムについて
フィルムはデジタルカメラのメモリーカードのような役目をしますが、1本のフィルムで写せる枚数は24枚か36枚です。
フィルムの種類と特徴
35ミリフィルムを大きく分けると
- ポジフィルム
- カラーネガフィルム
- モノクロフィルム
になります。
ポジフィルム | 現像すると、フィルムがカラーで仕上がります。以前はよくプロの方が使用していましたが需要は少なくなっています |
カラーネガフィルム | 一般的によく使われているフィルムです。扱いやすいフィルムでコスト面からも、初心者の方はこちらの使用をおすすめします |
モノクロフィルム | 写真が白黒に仕上がります。白と黒の陰影を楽しむフィルムです フィルムカメラに慣れたら、次のステップとして使ってみてください。独特の世界を楽しめます |
カラーネガフィルムの特徴
3種類の中でカメラ初心者におすすめなのはカラーネガフィルムです。カラーネガフィルムは各メーカーで色が微妙に変わります。自分の好みの色を見つけるのも楽しみのひとつです。国産のものから海外のものまでありますが、ISO感度、C41(カラーネガフィルムを現像するときの基準)の表示があるものは国際統一規格ですので、安心して使用してください。
購入する時の注意点
フィルムには有効期限があります。期限を過ぎると色が変色していくので気をつけてください。フィルムを車の中に置いたままにしておくと気温差が大きく、変色を早めてしまいます。購入後、高温多湿の場所に置くのは避けましょう。
フィルムの選び方
フィルムカメラではフィルムの感度を知ることは大事です。デジカメやスマホはいつでも、どこでもきれいに明るく撮れるように設計されています。また、天気が晴れと曇りでも写真は大きく変わります。室内と屋外ではもっと顕著に結果が現れます。フィルムカメラ初心者の方は、晴れの日も曇りの日もまかなえるISO400のフィルムがおすすめです。
フィルム感度 | 屋外で使用する場合 | 室内で使用する場合 |
ISO100 | 晴天の日の外できれいに撮れる | 室内には向いていないが、ストロボやフラッシュ撮影で撮れます |
ISO400 | 曇り、晴天どちらもきれいに撮れる | 昼間の明るい室内ならきれいに撮れるが、夜に室内灯だけではきれいには撮れない。フラッシュやストロボ撮影が必要です |
ISO800 | 晴れた日に使うと明かるすぎる写真になる。曇りの日や、晴れた日でも運動会などの動きのある被写体を撮るときに使うとブレにくい | 家庭内での日常は撮れますが、室内競技のスポーツを撮る場合などはもっと高感度のフィルムが必要になります。 |
フィルムを入れるときの注意
フィルムは光にあてるとダメになります。フィルムはパトローネという光を通さない密閉された金属のケースに入っています。先の方の5センチ位がケースから出ていますが、フィルムを装填する場合、必要以上にパトローネからフィルムを引き出さないようにしてフィルムをセットします。
コンパクトカメラのフィルム装填
自動で送る機能がついているカメラはフィルムを延ばしてセットしフタを閉じると自動でフィルムを送りはじめます。フィルムカウンターが1を表示したら装填できています。
Eが点滅している場合は装填エラーがおきているのでやり直しましょう。
一眼のオートフォーカス機
一眼のオートフォーカス機もカメラの端までフィルムを延ばして、フタを閉めます。こちらもフィルムカウンターに1と表示されればきちんと装填されています。
一眼のマニュアルフォーカス機
マニュアルフォーカス機には自動送り機能がありません。下記手順でフィルムを入れてください
- 1.巻き戻しクランクを上にあげて裏ブタを開けます
- 2.フィルム室にフィルムを入れ少し引き出します。巻き戻しクランクを下げます
- 3.フィルムを右側のスプールのスリットに差し込んでフィルム巻きあげレバーで巻きとります。スプールから外れないようにパーフォレーションがギアにかみ合って巻いているか確認してください。確認出来たら裏ブタを閉じます。
- 4.フィルムを入れたらISO感度の設定をします。ISOはASAと表示されている機種もあります。
フィルムカメラの持ち方、構え方
デジタルカメラは手ブレ補正機能が優れており、手ブレすることはまれです。
フィルムカメラはデジタルカメラと比べて「手ブレ」や「ピンボケ」をおこしやすいカメラです。慣れないうちはシャッターを押すときにカメラも同時に動かしてしまいブレやすいです。コンパクトデジカメやスマホに比べるとフィルムカメラは倍以上の重量があります。カメラが動かないように、両手でしかっりとカメラを持ち脇をしめてカメラを構えましょう。
フィルムカメラ各部名称と使い方
マニュアルフォーカス機
・絞り(F値)とは:絞りはピントの合う範囲を調節する機能です。数字が小さい方がピントの範囲が狭いため背景がよりボケて写ります。絞りの数字が大きくなると、ピントの合う範囲が広くなります。集合写真や風景を撮る場合は絞り(F値)を大きい数字に合わせてください
・シャッタースピードとは:フィルムに光をあてる時間のことです。
・露出とは:写真を撮るために取り込む光の量をいいます。フィルムカメラではシャッタースピードと絞り(F値)とフィルムの感度を組み合わせて、光の量が決まります。
マニュアル撮影する場合
- 1.モードダイヤルをMにします
- 2.レンズ側で絞り(F値)を好みの設定にします
- 3.ファインダーをのぞき、撮りたいものにピントを合わせます
- 4.ピントが合ったら、シャッターを半押しにしてファインダー内の露出計を確認します
- 5.露出計は設定した絞りに対して、光を入れる時間を計算し、適正なシャッタースピードを表示します
- 5.露出計が指しているシャッタースピードをダイヤルで合わせます
- 6.シャッターを押して撮影完了です
上記が適正露出で撮る場合の撮影方法になります。
オートフォーカス機
マニュアルフォーカス機に比べて、オートフォーカス機はさまざまな設定ができます。スポーツを撮るのに向いているシャッタースピード優先モードの機能も優れているので運動会の撮影もできます。表示パネルを見れば、設定モードなど一目でわかるので初心者の方にもわかりやすいです。最初はオートフォーカスで撮影してみるといいでしょう。それから絞り優先、シャッタースピード優先とステップアップしてみてください。慣れたら、マニュアル設定もできるので挑戦してみてください。
フィルムカメラピントの合わせ方
オートフォーカス機
ファインダーを覗き、撮りたいものに向かって、シャッターボタンを軽く半押しにします。半押しの状態でカメラはピントを合わせます、ピントがあったらシャッターを切ってください。
コンティニアスモードとは
・コンティニアスモードとは、半押しを続ければ被写体が動いてもピントを合わせ続けてくれる設定のことです。スポーツや子どもの撮影にも向いています。
絞り優先モードとは
背景をぼかして撮りたいとき、好みの絞り(F値)を設定したら、カメラがシャッタースピードを決めます。
シャッタースピード優先モードとは
電車や、スポーツなど動くものを撮るときはシャッタースピード優先モードがおすすめです。シャッタースピードを早くすれば動いているものが止まっているように撮れます。反対に遅くすれば、動きが出るため躍動感が感じられます。
マニュアルフォーカス機
ファインダーを覗き、ピントダイヤルを回してピントを合わせます。ファインダーの景色が鮮明ならピントが合っています。ファインダー内の映像がボケていたり、中央の画面にズレが生じている場合はピントが合っていません。
どちらのカメラで撮る場合も、「シャッタースピード優先」より「絞り優先」で撮る方法が初心者にはおすすめです。
フィルムをカメラから取り出す、現像に出す
フィルムを取り出すときの注意点
フィルムカメラは、フィルムを取り出すときにも注意が必要です。ここからはフィルムを取り出すときの注意点を詳しく解説します。
オートフォーカス機のフィルムの取り出し方
フィルムが終了すると自動でフィルムを巻き上げます。巻き終わったら裏ブタを開けて取り出しましょう。
マニュアルフォーカス機のフィルムの取り出し方
マニュアルフォーカス機の場合は、フィルム取り出しの際に注意が必要です。フィルムを巻き上げないまま、フタを開けてしまうと光が入ってしまい、せっかく撮影した写真が真っ黒になってしまいます。フィルムを取り出す場合は、慎重に行いましょう。
- 1.巻き戻しロックボタンをおす(カメラ底部にあるタイプが多いです)ロックボタンを外すのを忘れるとフィルムが破損します。
- 2.巻き戻しクランクの取っ手をだします
- 3.取っ手をまわして巻き取ります(まわす方向はレバーに矢印が刻印してあります)
- 4.巻きながら軽くなったら終了です
- 5.巻き戻しクランクを引き上げて、裏ブタを開けフィルムを取り出してください
フィルムを現像する
巻き上げたフィルムは現像に出します。
現像は近くのDPEショップか、近くにショップがない場合は、フィルム現像・郵送サービスを行っている写真店もありますのでそちらを利用してください。
注文方法は、
- 「同時プリント」:現像とプリントをセットで行うことです。
- 「同時プリント」+「デジタルデータ」:現像後にプリント、デジタルデータを同時に注文できます
- 「現像のみ」+「デジタルデータ」:プリントがいらない場合は現像後、デジタルデータのみの注文もできます。
撮影後は早めに現像に出されることをおすすめします。現像せずに何ヶ月もそのままにしておくと変色していきます。高温多湿の車中に置きっぱなしにすると変色が早いので注意してください。
現像しないとどう写っているかいるかわからないので、現像後のデータやプリントを確認する作業は緊張をともないます。
初心者でもフィルムカメラを使いこなそう
ここまで、フィルムカメラの説明をしてきました。簡単にまとめると、フィルムカメラはフィルムにあてる光の量を自分で決めて撮るカメラです。光の量は、露出計を見ながら、絞りとシャッタースピードで決めます。これ以外を操作することはほとんどありません。デジタルカメラよりシンプルな構造になっています。最初は写真を撮ることを楽しんでください。写真は個人の楽しみですから、まずは主観的に楽しんでください。カメラの仕組みや技術を学んで撮りたい写真を撮りたいように楽しんでください。楽しんだ先にあなたらしい写真が撮れるようになるのだと思います。