【フィルムカメラ初心者のギモン】どこで現像するのがいいのか知りたい

【フィルムカメラ初心者のギモン】どこで現像するのがいいのか知りたいカメラ初心者

「フィルムカメラで写真を撮ったけれど、実は写真屋さんの雰囲気がちょっと苦手。」
「フィルムカメラ好きの集まるお店にも行ってみたけれど、なんだか少し敷居が高いかも。」 
初心者にとってはよくわからないことだらけで、写真屋さんでオーダーするのが怖いなと思ったことはありませんか。

そんなフィルムカメラ初心者のあなたに、フィルムを持ち込むときの指示の出し方からインデックスプリントを活用した焼き増しの方法までご紹介していきます。

[講師]フリーランスフォトグラファー 坂本光三郎

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業者によってそんなに現像に違いが出るの?

業者によってそんなに現像に違いが出るの?

差が出るのは現像ではなく、プリント

結論からいうと、フィルムの「現像」は、街の写真屋さん、大手チェーン店、フィルム好きの集う人気店、激安ネット店舗、どこに出しても違いはありません。違いが出るのは現像ではなく、プリントのほうです。撮影済みのフィルムからネガフィルムをつくるのが「現像」で、そのネガから印画紙に焼き付けたものがプリントです。ネガフィルムをつくる工程は、どこのお店も品質管理された現像処理を機械で行いますので、差が出る余地がありません。

店頭で「現像をお願いします」というと

店頭で「現像をお願いします」というと、「はい、同時プリントですね?(ニッコリ)」と聞き返されるのがフィルムカメラ初心者のスタートラインです。フィルムを現像して、同時に印画紙にプリントするから「同時プリント」なのですが、プリントと現像をごちゃ混ぜにしている人が意外と多いので、誤解がないように店員さんはしっかりと確認してきます。

ちなみに現像のみをオーダーすると、現像されたネガフィルムと、オマケのような小さなインデックスプリントだけが戻ってきます。

現像されたフィルムをどうやって見る?

現像されたフィルムをどうやって見る?

現像されたネガフィルムをもとに、写真をどうやって見るかを選べます。

  1. 印画紙にプリント(同時プリント)
  2. CD-ROM、もしくはクラウドにデジタルデータ
  3. 1.と2.の両方
  4. 現像されたフィルム+インデックスプリント(通称「現のみ」)

現像すると、1.にも2.にも、それぞれにもインデックスプリントという、写真の一覧がプリントされた、L版の印画紙が付いてきます。インデックスプリントは、撮影の時系列も分かりますので、写真の整理や焼き増しの時にも間違いがなくて重宝します。

2.のデジタルデータは、スマホなどにダウンロードして、スマホ上でコントラストやシャープネスを変えたりフィルターをかけたりトリミングしたりと、レタッチしてから再度プリント、もしくはSNSに投稿するのが一般的です。ただ、L版をプリントするのに適した解像度(200~300万画素)しかありませんので、あとでL版よりも大きくプリントしたくなった場合に、現像済みのフィルムが必要になります。フィルムは傷が付いたりカビが生えたりしないよう、大切に保管してください。

インデックスプリント

4.のインデックスプリントはコンタクトシートという、印画紙に直接フィルムを寝かせて露光させ、焼き付けたプリントの簡易版です。「ベタ焼き」ともいいます。コンタクトプリントはプロラボ以外ではほぼ見かけないサービスです。手焼き作業になるので36枚分の同時プリント代より高く付きます。プロは間違いがないよう、コンタクトシート表面にプリント指定、焼きの指示を直接書き込んでプリントに出します。何で付いているのかよく分からないと思っている方もいるかもしれませんが、これ、もともとはプロ向けのサービスです。大いに活用しましょう。

同時プリント・スピード仕上げの写真屋さん

同時プリント・スピード仕上げの写真屋さん

街の写真屋さんには、大手チェーンも個人のお店も、どこも現像からプリントまでを全自動でこなす機械が導入されています。かつては「DPE屋さん」ともいわれていましたが、最近はあまり聞き慣れないようです。DPEは、Develop(現像) Printing(焼き付け) Enlargement(引き伸ばし)の略で、かつての写真屋さんのイメージそのものでした。

この機械、デジカメであれば、画像データに自動記録される情報をもとに「これは夕景やね」「これは室内やね」「これはポートレートやろ」とかなり正確に自動補正してくれます。撮影時の情報を手がかりに、ある程度は思い通りに仕上がるデジカメのプリントと比べると、フィルムのプリントはとっても不利です。焼き付けるときの色や明るさの補正はセンサーがネガを読み取って機械的に処理するだけなので、当然「コレじゃない」と不満が残る場合もあります。

そんな中、10年ぐらい前のトイカメラブームのころに「同時プリントに独自の個性を出した」写真屋さんがいくつも登場してきました。

一枚一枚焼いていくお店

一枚一枚焼いていくお店
フィルム:SUPERIA PREMIUM 400

そうしたお店では、フィルムから撮影者の意図を汲み取って、一枚一枚モニタで確認しながら「流行りの色に」焼いていきました。機械任せと比べると数倍の時間がかかりますが、そうしてフィルムで撮った「透明感のある」「柔らかいトーン」の写真が世に溢れかえりました。街の写真屋さんが「記録のサービス」ではなく、「表現のサポート」に大胆に足を踏み入れた、時代の転換期でした。今、フィルムで撮る人たちに人気のお店も、この系譜に連なる部分が多いかと思います。そうしたお店では「雰囲気指定」といって、明るさだけではなく、色のトーンやコントラストまでもが選べるようになっています。

今では、大手チェーン店でも、必ずモニタで一枚一枚チェックして、最低限、明るさの補正状態を確認してからプリントするように、ひと手間を加えるのが当たり前になっています。富士フィルムは昔から「プリントソムリエ検定」的な、優良オペレーター認定を行っています。どこかで「品質優良店認定」という看板を見たことはないですか? あの看板は、「プリントが上手な店」というフジカラーのお墨付きなのです。写真の仕上がりに対するお客さんの満足度を最優先に考えてくれるはずなので、探してみるのも手だと思います。

よいプリントって何だろう

よいプリントって何だろう

「思い通りの仕上がり」こそが「よいプリント」

実は、昔は写真屋さんがとても苦手でした。何というか「選ばれし紳士の社交場」的な、お得意さんを優遇するサロンの雰囲気が馴染めませんでした。

近所にあった老舗の写真店でしたが、中学生ぐらいから月に1本ぐらいのペースでフィルムを持って行っていました。撮っていたものは街角スナップとか風景とか猫とか、まあイマイチなものばかりでした。同時プリントの仕上がりもそれなりで、空が真っ白になった夕焼けとか、透明感が出るように明るく、飛ばし気味に撮ったはずの絵が、しっかりと濃くプリントされていたりと、まったく思い通りにならないもどかしさを感じていました。

これは今でもよくあることで、明るすぎたり暗すぎたりといった露出のバラつきを、紙に焼くときに適正に「救済」できるのがネガフィルムのよいところです。実はフィルムの持っている情報量はとても多く、そのごく一部だけが印画紙上に抜き出されているのです。機械がネガの調子を読み取って、適正に補正してくれます。ただその「適正」というのが曲者で、逆に「意図してあえて明るくor暗く撮ったもの」まで自動補正してしまいます。意図的に露出を変えた場合、同時プリントでは、まず思い通りの仕上がりにはなりません

見本をつけるとさらに仕上がりがよくなる

一番お手軽に、よい良い仕上がりのプリントを得るには、仕上がりの見本となる写真を見せることです。口頭で「こんな感じ」と説明しても、お互いに基準となる物差しがありません。結局、自動補正された写真に、ほんのちょっとだけ要望に応えた手心を加えるような仕上がりになってしまうのがオチです。もちろん、何度か見本を見せるようなことを繰り返し、顔見知りになった店員さんならば「あなたの色」を覚えてくれるかもしれません。

明るさの補正は、露出の+1段、-1段という指示が手っ取り早いのですが、初心者にはちょっと勘どころが難しいと思います。そこは素直に「こんな感じに仕上げてください」と見本になるような、似たような構図の写真や雑誌の切り抜きなどを一緒に持っていくと確実です。

焼き直しが無料の店を探してみよう

焼き直しが無料の店を探してみよう
フィルム:SUPERIA PREMIUM 400

意外と知られていませんが、写真屋さんによっては、仕上がりの明るさが気になる場合、無料で焼き直してもらえます。

実際、コイデカメラさん(関東のチェーン店)などは、「ご満足いただけるまで、何度でも写真を焼き直しいたします*」と宣言しています。明るさが気に入らなかったプリントと引き換えにはなりますが、無料で新たに補正したプリントを焼いてくれます。
*2021年12月現在の情報です。

インデックスプリントを見て、明るさを指定して焼き増しする

小さなL版に焼かれたインデックスプリントの一コマ一コマは、はっきりいってよくわかりません。
ところが、フィルムルーペを使ってのぞき込むと、意外なほどよく見えます。インデックスプリントを見るだけなら5倍もあれば充分です。インデックスは明るさの目安にはなるので、思い通りになるように明るさを変えて、プリントの指示を出すことができます。よさそうなコマだけプリントすれば無駄も少なくて、ちょっとプロっぽいですね。

キャッチボールの相手を見つけるように

キャッチボールの相手を見つけるように

チェーン店でも店舗によってそれぞれ

何度か通えば、あなたとセンスが合うオペレーターさんに会えるかもしれません。同じ店でもオペレーターさんのセンス次第という部分もありますので、「プリントはこの人で!」と指名したくなるようなオペレーターさんに会えるまで、とにかく写真屋さんを巡って試してみてましょう。

また、実は明るさだけでなく、コントラスト、彩度なども、ある程度ですが指定できるお店もあります。プリント料金も割高になる場合が多いですが、まずはそういった対応が可能かどうか、相談してみましょう。

プリントはキャッチボールのように

もちろん、どんなに技術を持っているオペレーターさんでも、あまりにも明るすぎたり暗すぎたり、ちゃんと写っていないものは、いくら見本があってもどうしようもありません。向こうにきちんと届く、相手がキャッチできるような写真を撮るのが理想です。投げた球がちゃんといい感じで返ってくるような、そんなお付き合いのできるお店を探してみましょう。

もっとも、何度かフィルムのキャッチボールをすれば、(相手はプロですから)あなたの技量はバレバレです。思い通りの仕上がり目指して、わからないことはとにかくどんどん写真屋さんで聞いてみましょう。わかりやすい回答が返ってきたら、それがあなたにとってのいい店になっていくと思います。それこそがいい仕上がりへの近道です。

この記事を書いた人
フリーランスフォトグラファー 坂本光三郎
  1. フリーランスフォトグラファー 坂本光三郎

もとは中古レコード屋の店員で、ライター業を経て20代後半で写真家を目指し、広告写真家のアシスタントを経験し独立。フィルムからデジタルの過渡期に揉まれてきました。フィルムカメラはゼンマイ自動巻き上げが楽しいキヤノンのハーフカメラ、DIAL35を愛用。カラー暗室持ち。